2010/11/20

Art is the universal language. Art is the universal weapon.

イサム・ノグチ 宿命の越境者 上 ドウス昌代 著 (講談社
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

世界的なアーティストととして知られるイサム・ノグチの 84 年の生涯を綴り、2000 年に第 22 回講談社ノンフィクション賞を受賞した作品。ここで取り上げるのが、なんで、上巻だけかっていうと、この本の上巻の 1 章・2 章の部分が映画『レオニー』のインスピレーションの源になったから。下巻ももちろん読んでみるつもりなんだけど、キッカケが『レオニー』だったんで、ここではあえて上巻のみで。

そもそものキッカケは、WOMB で行われてるレジデント・ドラムンベース・パーティ、06S の MC で、個人的にも親交のある YUUKi MC の母親の松井久子監督が
『レオニー』の監督で、YUUKi くん自身も映画のプロデューサーを務めてるから。

ただ、それだけじゃなく、
イサム・ノグチ自身にも興味があって、数年前にまだ雪で真っ白だったモエレ沼公園(言わずと知れたイサム・ノグチの代表作のひとつ)に行ったときに、園内のギャラリーでイサム・ノグチについてもいろいろ資料を見たりしたんで、純粋に映画自体にも興味があって、その映画のインスピレーションになったっていう本書自体にも興味を持って読んでみた、と。 


なんで '原作' ではなく 'インスピレーションになった' って書き方をしてるかっていうと、本書はあくまでもイサム・ノグチの生涯を綴ったモノで、当然、主役はイサム・ノグチ。母親については前半の約 1/3 に登場するだけで、しかも、あくまでもイサム・ノグチをメインに書いているし、これまでほとんどスポットライトが当たってこなかった人物なので、1 本の映画の原作になるほどの情報量はなくて。ただ、松井久子監督はこの本を読んで、イサム・ノグチの母親のレオニー・ギルモアって女性の人生にすごく魅かれて、この本をベースにしつつ、足りない部分を調べながらも、あくまでも 'フィクションとして' 独自の解釈を交えて映画化した、と。だから、あくまでも 'インスピレーションになった' って言い方をしてるわけで、結果的には、それが作品自体をユニークなモノにしてる特徴でもあるかな。

本書自体はあくまでも
イサム・ノグチが主役で描かれてるんだけど、この手の人物記にありがちな時系列を淡々とまとめたようなモノとは一線を画す仕上がりになってて、純粋に読み物としてすごく面白い。特に、周辺の資料や交流のあった人物への綿密な取材は読み応えは十分。イサム・ノグチっていう人物についてだけでなく、当時の時代背景なんかも適時触れられてるんで、約 100 年前の話とは思えないほどすんなりと読めちゃう感じ。

ただ、
もちろん『レオニー』とまったく同じではないし、コレを読まないと『レオニー』が理解できないってわけでは全然ないんだけど。読めばより『レオニー』がわかるって面はあるけど、どちらかというと、映画を見た後にプラス・アルファとして読んでみると、より余韻が味わい深くなる感じかな、と。なので、まずは『レオニー』を観るのがいいかな? 友達絡みだからってだけじゃなくて、純粋に映画としても観応え十分なんで。アーティストがモチーフにはなってるけど、いい意味で、それほどマニアックでも尖った感じでもないんで。だからこそ、単観とかミニシアターではなく全国ロードショーなんだろうけど。一般公開は今日、11 月 20 日から。

まぁ、この『イサム・ノグチ 宿命の越境者』も『レオニー』も、イサム・ノグチとその母親のレオニーがメチャメチャ先進的で、メチャメチャパワフルで、メチャメチャノマディックで、メチャメチャユニヴァーサルで、メチャメチャ魅力的であることを強く再認識させてくれる作品であることは間違いない。個人的には、'母親の強い愛情' とかよりも、そういう面のほうが印象に残ったかな。
SAMBO

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