2008/09/11

Let's rock.

Apple Special Event September 2008 / Keynote Address (Apple Inc.)  

2008 年 9 月 9 日に開催されたアップルのスペシャル・イベントでのスティーヴ・ジョブズのキーノート・アドレス。毎回、アメリカのアップルのサイトで QuickTime のストリーミングで視聴することができ、最近は後にポッドキャストでも配信される。

基本的には、アップルの新しいプロダクト / サービスの発表でしかないわけで、まぁ、言ってみれば新製品のお披露目会見でしかないんだけど、それをキチンとイベントとして成立させて、もはやエンターテインメントと呼べる域にまで昇華させているのがアップルの特徴。特に「スペシャル・イベント」と称されているイベントは、マックワールドや WWDC といったカンファレンスの冒頭で開催されるものとは異なり、わざわざこのためだけに会場を押さえ、プレスや関係者を呼んでいるのが特徴で、iPod 絡みの製品発表で行われることが多い(あまりキチンと認識されてないけど、iPod は Mac ブランドの製品ではないことを考えると、別におかしいことではないけど)。

ともあれ、スティーヴ・ジョブズのプレゼンテーションはもはやエンターテインメントと呼ぶべきクオリティ、言ってみれば、ミュージシャンのライヴのようなモノだと思うので、あくまでもライヴ・パフォーマンスとしてレビューしたほうが正しい。今回は、iTunes のアップデート(ver 8)、iPod classic、iPod nano、iPod touch と App Store、iPod touch(及び iPhone)のソフトウェアのアップデート(ver 2.1)を披露した。

iTunes Store はアマゾンやウォルマートを押さえてアメリカで最大の音楽ショップになったということで、今や iTunes が世界で最も使用されているソフトウェアのひとつであることは間違いない(
もちろん、iPod は iTunes なしでは使えないわけで、iPod のアメリカのポータブル音楽プレーヤーのシェアは 2008 年 7 月のデータで 73.4% でダントツで 1 位だとか。2 位は「その他」で 15.4% なので、ライバルはいないということ。ちなみに、マイクロソフトの Zune は 4 位で 2.6%。健闘してるって言えるのか?)。アメリカでは、映画とか TV ドラマとか、いろいろコンテンツが充実してる iTunes だけど、日本ではまだまだ(NHK スペシャルとか売ってくれればいいのに)なので、今回の目玉は「Genius」という新機能くらい(さすがアップル。すごいネーミングだ)。ユーザーの聴いてる曲のジャンルなどの情報をもとにライブラリの曲でプレイリストを作成してくれたり、iTunes Store の曲をオススメしたりするという機能で、iTunes に試験的にベータ版が搭載されていた「Just For You」を発展させたような、シャッフル機能をさらに一歩進めたようなモノ。しかも、各ユーザーのデータを匿名で集めることで、その精度を高めていく(ユーザーが増えれば増えるほど、使えば使うほど、精度が高まる)ということで、アマゾンの「おすすめ商品」や「この商品を買ったユーザーはこんなものも買っています」といった感じの、パーソナル・カスタマイズ的なサービスなんだけど、'tailored' なんて言っちゃうところはジョブズらしい。まぁ、ただ「買え買え」というだけじゃなく、既に持ってるライブラリでも使えるところがいい点かな、と。どちらにしても、メタデータが重要になることは間違いなく、ますますタギングの時代になっていくことは間違いなく、その傾向を顕著に示してるアップデートだと言える。

シェアの約 3/4 を獲得した iPod では、まず iPod classic がモデル・チェンジ。より薄く、より大容量で、より安く。大幅な変更ではないけど、良心的且つ堅実なアップデートという印象だ。一番売れてる感が強い iPod nano は曲線を活かした筐体デザインと大きくなったスクリーン、そして「nano-chromatic」と名付けられた全 9 色のカラーリングでインパクト抜群。アクセレロメーターが搭載されたので、iPod touch や iPhone のように傾きを検知してモニタの表示方向を変えることができるようになり、渋いところではヴォイス・レコーダー機能が付いた(マイク付きヘッドフォンを使うことで使用可能)り、筐体自体を振るとシャッフルされる「Shake to shuffle」なんてくだらないけど面白い機能も付いてる。もちろん NIKE + iPod にも引き続き対応。スクリーンが大きくなったので、写真や動画を見たり、ゲームをしたりするのにはかなり良くなっているし、容量も増えて値段も下がってるので、これは人気が出そう。個人的には、シルバーとブラック以外だと(これだけ用意されてシルバーとブラックを選ぶのは野暮な気もする)パープルがいいかな。

「The funnest iPod ever」と謳われている iPod touch にはスピーカーが付き、
NIKE + iPod のレシーバーとソフトウェアが内蔵されて NIKE + iPod に対応した。とても面白いけど、NIKE+ で使うにはちょっとデカイかな、と。ゲームにも力を入れてるっぽいけど、あまりやらないんであんまり魅力は感じない。個人的には iPhone との差別化が難しく、ビミョーな感じがしてるけど、値段・容量を考えるコスト・パフォーマンスは高いし、いわゆるケータイを手放せない人にはアリなのかも。因みに、 iPod touch iPhone で使える App Store は、オープンから 60 日で 100,000,000 ダウンロードを達成したとか。アップデートされたソフトウェアは ver 2.1(iPhone も同様)。主にバグ・フックス系らしく、バックアップが著しく速くなったことはサラッと、でも強調してて、これには場内も当然、盛り上がってた(みんな不満だっただろうね)。

いつも欠かせないサポート・メンバーであるヴァイス・プレジデントのフィル・シラーによるゲームのデモを含むいくつかのデモを挟みつつ、ここまでのステージは約 50 分。最後はもちろん、スペシャル・イベントには欠かせないゲスト・ミュージシャンのライヴで締めくくる。今回は、「#1 selling male artist in iTunes history」として紹介されたジャック・ジョンソンが登場。T シャツ+ジーンズ+サンダル+ギターというリラックスした出で立ちで登場、MC を挟んで 3 曲を披露して、大喝采の中でイベントは終了した。今回のステージはトータルで 1 時間強。相変わらず喋りもグラフィックのつくりかたも上手で、充実したライヴ・パフォーマンスだった。下手な TV や映画を観るよりもよっぽど楽しめるし、プレゼンテーションをするなら、このくらいやらないと。

ちなみに、アップルのアメリカのサイトのトップからスペシャル・イベントのページへのリンクの URL は「http://www.apple.com/quicktime/qtv/letsrock/」。つまり、テーマは「Let's Rock」ってこと。すぐに別のアドレスにリダイレクトされるんだけど、こういうところの、ちょっとした遊び心もアップルっぽい。

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