2008/08/27

Think ecological.

エコロジー

. :ドミニック・シモネ 著
. :辻 由美 訳 (白水社

お茶の水のガイアの 3F のみみをすます書店で偶然見つけて、あまりにも直球なタイトルと古書然とした佇まいに妙に魅かれて購入し、しばらく読む機会がなくて放置してた一冊。前にレビューした『成長の限界』に続けて、夏になると古典を読みたい気分になる流れで手をつけてみました。

この本についても著者についても何の予備知識も持ってなかったし、ネットでちょっと検索してみてもあまりマトモな情報は見つからなかったので、世の中的にどの程度の重要度とされているのかわからない(インターネットの世界では 1980 年代頃の情報がすっぽり抜け落ちがちな傾向があるので、ただ単にそこにハマってるだけなのかもしれないけど。この問題は、あまり語られることがないけど、ネットの世界の大きな落とし穴で、もっとキチンと認識されるべきだと、個人的には思ってます)けど、結論としては、なかなか読み応えのある一冊でした。


原書の発行は 1979 年で翻訳は 1980 年ということからも察することができるように、約 30 年前に、70 年代頃から活発化してきたエコロジー運動の概要をフランス人の作家がまとめたもので、サブ・タイトルは「人間の回復を目指して」。「エコロジー」という言葉の語源や定義からはじまって、世界の動きやフランス国内の動きなどを、科学的・活動的な側面を総括的にまとめられてて、安易に濫用されてる感の否めない「エコ」なんて安っぽい略語にはない「深み」が感じられるし、今読んでも示唆に富んだ内容になってる。

個人的にすごくいいな、と思ったのは、イヴァン・イリッチの言葉として紹介されてる「共歓性」という言葉(原語は 'convivialité' で、著者との意見交換の末につくった造語であると訳者のあとがきに記されている)とその考え方。「陽気さ」と「連帯性」を含意とするらしいんだけど、この語の持つ感覚はすごくフレッシュ。こういう感覚は大事にしないと。

ちなみに、この本は白水社の文庫クセジェの一冊で、クセジェ(que sais-je?)とはフランス語で「知ってる?」みたいな意味。前から気にはなってたんだけど、巻末にあるリストを見る限り、なかなか難しそうで興味深いモノが多い。どっか、品揃えのいいところ、ないかな?

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